若い頃から本を読むだけで生きていけたらどんなに素晴らしいだろう、と真剣に考えてきた。本を読む楽しみだけは、とうとう誰にも奪えなかった。本だけは手放さなかった。本を読むことだけは絶対にあきらめなかった。いつだって本を読むことが生活の中心にあった。 何の役 ...
<小沢健二&小山田圭吾:渋谷系の原点>「渋谷にフリッパーズ・ギターがいた時代」〜序章〜
大学生の頃に東京に住んでいた僕は、90年前半の渋谷に毎日のように地下鉄に乗って通っていました。目的の場所はセンター街の奥にあるHMV渋谷店。いわゆる渋谷系の聖地と呼ばれていたCDショップです。渋谷系のミュージシャンのCDが並ぶ棚の上にはフリッパーズ・ギターの二人 ...
【連載小説】「東山線沿線で君を待っている」vol.1
東山線の名古屋駅で地下鉄1日乗車券を買い、改札を抜けて階段を降りると、いつものように地下鉄独特の風が吹いてくる。僕はすぐにやってきた黄色いラインを車体に走らせた列車に乗って、名古屋駅から伏見駅、栄駅、新栄駅を経て、まずは千種駅で降りる。 千種駅を降りて ...
自分の中にあるはずの何かを信じる。村上春樹「職業としての小説家」
職業としての小説家 (新潮文庫) [文庫]村上 春樹新潮社2016-09-28 村上春樹さんは何より自由を重んじる人だ。「騎士団長殺し」の雨田具彦がファシズムや軍国主義を憎み、自由を希求したように。 本書でもファシズムや軍国主義まではいかないものの、第八回「学校について」 ...
ジョン・チーヴァー/村上春樹訳「巨大なラジオ/泳ぐ人」
巨大なラジオ / 泳ぐ人 [単行本]ジョン・チーヴァー新潮社2018-11-30 柴田元幸さん責任編集の『MONKEY vol.15 summer/fall2018』の特集が「アメリカ短編小説の黄金時代」でした。その特集の核となったのが村上春樹さん翻訳のジョン・チーヴァーの6つの短編作品です。以前か ...
余は人間社会に帰還する。町田康「生の肯定」
生の肯定 [単行本]町田 康毎日新聞出版2017-12-20 今の日本の作家で「文士」という言葉が最もふさわしいのは町田康ではないか。現在は小田原在住らしいし、小田原在住の町田康を「文士」と呼ばずして一体誰を「文士」と呼べばいいのか。小田原で悠然と小説を書いている町田 ...
村上春樹・川上未映子「みみずくは黄昏に飛びたつ」
みみずくは黄昏に飛びたつ [単行本(ソフトカバー)]川上 未映子新潮社2017-04-27本書を読み始めて、「おや?」と一番意外に思ったのは、村上春樹が中上健次の思い出に言及しているところだ。村上春樹はデビューした頃に中上健次と雑誌で対談したのだが、その対談後に中上健 ...