伝説の漫画「かっこいいスキヤキ」から最高傑作ARM JOEをご紹介します。

ARM JOE(アーム・ジョー)

小学生の少年が教室の自分の席に座っている。

心の中で考え事をしている。

「アーム・ジョーの事を考えると、ブルース・リーの映画を観たあと

みたいにドキドキした」…


…アメリカ、百年ほど昔、黒人はまだ虐げられた奴隷であった。

「黒色人種のくせに!」と白人の主人がムチで上半身裸の黒人奴隷を叩いている。

黒人奴隷は「ギャ!」と叫び、「ご主人様お許しくだせえもう二度と…」

と泣きながら謝罪している。


ジョー・グリーンはジョーンズ家の庭の片隅に建てられた、みすぼらしい小屋に生まれた。

父はエドワード・グリーン。母はサリー・グリーン。

ジョーは生まれつき腕っぷしが強くて、よちよち歩きをしながら大きな台車を押して両親を驚かせた。

そのため『アーム・ジョー』というあだ名で呼ばれた。
 

主人である白人のジョーンズから命令される。

「オーイ、アーム、夕方までに裏からマキを全部運んでおいてくれ!」

ジョーは顔から汗を流し、シャツをまくりあげて、「はい!旦那様!」と一生懸命まじめに働いた。
 

物心ついた頃からアーム・ジョーの仕事はマキ割りに決まっていた。

朝から晩までマキを割る。だけどジョーはそれがちっとも苦ではなかった。

15の時にアーム・ジョーはキコリになって、山で暮らすことをこっそり夢見始めた。

「いつかアメリカ一、いや世界一のキコリになるんだ」ジョーは夕陽に向かってつぶやいた。


ジョーに弟が生まれた。三つ子だった。名前はトビー、ドリー、ユージー。

「オレの弟たちだ…」とジョーは弟たちを見つめて思う。

その日アーム・ジョーは母親のサリーに言った。

「ママ、僕はこの家を出ようと思うんだ」

サリーは驚いて、

「まあ!この子ったら何を言いだすの?三人も弟が出来たっていうのに!」と引きとめる。

ジョーは謝る。「ごめんよママ。だけどずっと前から決めてたんだ…それに今のベッドは僕にはもう小さすぎる」

父親のエドワードはジョーの夢にうすうす気付いていた。

「ほんとに行っちまう気なんだなジョー」

「ああパパ、きっと立派になってみんなを呼ぶよ」

母親が泣き叫ぶ。

「ジョー!ベッドはパパが作ってくれるわ!だから行かないで!ね、パパそうですよね!?」

父は玄関から出て行こうとするジョーを見送りながら涙を流す。

「…いいや、ママ。…ベッドは作らない。ジョーは私の息子だ」

ジョーは「パパ!ありがとう!!」と夜の闇の中へと駈けていく。
 

翌日すぐに追手が来た。しかしジョーはいろいろなトンチを使って追手を振り切り、

数ヵ月後、故郷から数マイル離れた山の中で、親切なトンプソンさんという白人に、

拾われるようにして雇われるーーキコリとしてーー

トンプソンさんはあたたかく声をかけた。

「こりゃあ、ひどい熱だ…こんな素晴らしい体を持っていながら…」

全身傷だらけのジョーは、「あーママ…ママー…」とうなされている。
 

自分の斧をもらったジョーは水を得た魚のように働いた。

どんな過酷な労働でも苦ではなかった。

重い自分の斧を見つめてジョーはつぶやく「オレの斧だ…」

山中にその名が知られるようになるまで何週間とかからなかった。

「あれがアーム・ジョーか」

「ああスゲエな。木を切るために生まれてきたような奴だ」

翌年行われた樵競技会では記録を全部塗り替えて優勝。

みんなが喝さいを浴びせる。

「いいぞアーム・ジョー!オレたちの英雄!」
 

夕暮れに、ときどきジョーは小さい頃から得意だったハーモニカを吹いた。

どこか物哀しくてあたたかい音色に、聴く者は故郷のこと、離れたところにいる家族のことや、恋人の事を思い出して泣いた。黒人も、白人もみな。

ジョーの噂はいつしか前の主人であるジョーンズの耳へも届いた。

「ううう…あの黒色人種よくもヌケヌケと…」

産業革命の波はアメリカへも押し寄せていた…

チェーン・ソー(電動のこぎり)が発明される。

早速チェーンソーを購入したジョーンズが怒り狂って叫ぶ。

「フフフ…こいつで思い知らせてやる… しょせん黒色人種は黒色人種!奴隷以上のものであってはならんのだ!!」
 

数日後、噂をききつけた村の仲間たちがジョーを心配して集まった。

「えっ、負けたらジョーンズ家にもどることだって!?」

「そんな無茶苦茶な!!」

「いくら鉄人アーム・ジョーだって相手が機械じゃ・・・」

「誰かなんとか出来ないのかっ!?」

「ジョー逃げろ!オレが山の抜け道を教えてやる!」

ジョーは落ち着いて答える。

「そんなことをしたらトンプソンさんに迷惑がかかるだけだ。オレは六つの時から斧を振っている。斧を振るために生まれて来たんだ。最高じゃないか文明が相手だなんて」


BANG!!ジョーとチェーンソーの勝負が始まった。

チェーンソーは物凄い威力で「ダダダダ、バリバリバリ」、と高速で木を切っていく。

ジョーも全力で斧を「ズカッ!ズカッ!ズカッ!」と木に叩きつける。「パパ!!ママ!!」

ギュイーン バリバリ!!

ズカッズカッ!!

ジョーンズが葉巻をくわえながらゆうゆうと見物している。

「フフフフ・・・」

村の仲間たちが必死で応援する。

「ジョー!がんばれ!ジョー!負けるな!」

ジョーは歯を食いしばって斧を振り続ける。

「オレの弟たち!トビー、ドーリー、ユージー!」

斧を木へ叩きつける。ガッ!ガッ!ガッ!

ジョーは涙を流しながら叫ぶ。

「神よ!!このオレに力(パワー)を!!!」

勝負は終わった・・・

勝ったのはジョーだった・・・

しかし、その時すでに、ジョーの命は尽きていた・・・


ここまで頭の中で「アーム・ジョー」を想像していた少年が学校から帰宅する。

「ただいまーセンセーもう来てる?」(福島出身の家庭教師の大学生が本嫌いの僕に勧めた本は…)

「もう二階で待ってらっしゃいますよ」

と母親が答える。

(タイトルだけで僕をワクワクさせた、内容も何も知らないのに、

感想文を書くのが読む前から楽しみだったのも初めてだった)

少年がドアを開けて自分の部屋へ入る。

「当番で遅くなっちゃった…先生こないだ言ってた本、買ってきてくれた?」

家庭教師が答える。「ああ買ってきたとも。ホントにいい本なんだぞ」

少年は机の上に置いてある本を見た。

「ああ 無情」(小学生3、4年向け)

 


 
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泉 昌之
扶桑社
2013-10-12

 

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