七つの会議
七つの会議 [単行本(ソフトカバー)]
池井戸 潤
日本経済新聞出版社
2012-11-02



池井戸さんの作品はほとんど全部読んでいて、どれも間違いなく面白いのですが、あえて一冊選ぶとすれば「七つの会議」です。

タイトルにもあるように、それぞれ主人公が異なる7つの連作短編集という形式です。そうは言っても登場人物は共通しており、全体として一つの長編小説になっています。


この小説の世界を作り上げている、メインキャラクターは、通称「居眠り八角」と呼ばれる営業第一課 万年係長の八角民夫です。これまでの池井戸作品にはいなかった、新しいキャラクターです。


舞台は中堅の電機メーカー東京建電。営業部の定例会議から物語は始まります。会議のトップは営業部長の北川。出席者は営業部の課長と係長冒頭から北川の容赦ない叱責が飛ぶ。


「目標未達でしたと報告するだけなら、のこのこ会議に出てくるな!」

 

北川にとって目標とは絶対に守るべき掟。目標未達の者は衆人環視の中、徹底的に叱責し、追い込み、ギリギリ締め上げる。


そんな緊迫した会議の中、腕組みをしたまま、メガネを外し、靴まで脱いで、居眠りしている男がいます。

 

それが八角民夫。会議となれば、これ幸いと居眠りをする万年係長。


一旦、出世街道から外れれば怖いものなし。北川の前でも堂々と居眠り。そしてついた呼び名が”居眠り八角”。

 

八角は年下の上司である坂戸に、毎日のように怒鳴られるが、薄笑いを浮かべるだけでした。


そんな八角だったのに、ある日突然坂戸をパワハラ委員会に訴えました。それを聞いた社員は誰もが、あれがパワハラになるはずがない、と最初は無関心でした。


ところが委員会はパワハラを認定し、その後に開かれた役員会では坂戸の「人事部付」が決まり、厳しすぎる処分に社内は騒然。

 

八角には坂戸を絶対に許せない理由がありました。それが最後までこの小説の最大の謎であり続けます。


そして八角というのが、本当はどういう人間なのか?その隠された過去とは何なのか?物語のクライマックスで明らかにされます。

 

「それが人間なんだよ」


最後に八角から意味深なセリフが漏れます。


作者は最後に会社という組織に絶望して終わるのではなく、どんな組織にも、どんな仕事にも、どんな人生にも、必ずどこかに希望はあることを示してくれます。


 

七つの会議
池井戸 潤
日本経済新聞出版社
2012-11-01