死神の精度 (文春文庫)
伊坂 幸太郎
文藝春秋
2012-09-20


本屋さんに平積みになっていた伊坂幸太郎さんの「死神の浮力」を見て、もの凄く面白そうなオーラが出ていたのですぐに買おうと思ったのですが、 実は私は今まで伊坂さんの良い読者ではありませんでした。

読了したのは「ゴールデンスランバー」のみ。だからいきなり買うことにためらいがありました。 本をパラパラめくると「死神の精度」の広告があり、 文庫本である本書を先に読んでみて自分が読めるかどうかテストすることにしました。 結論としては合格でした。しかも嬉しい高得点。

死神と聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは 「デスノート」の「リューク」。 リュークは口が耳まで裂けていて、大きな黒い羽根をはばたかせて飛んでいます。
一方、「死神の精度」の「千葉」と名乗る死神は、人間と同じ風貌で普通に歩いています。仕事は死を予定されている人間に接近して1週間調査し、死なせることが「可」か「見送り」かを報告すること。千葉はこの仕事が退屈でうんざりしていますが、 仕事だと割り切ってクールに業務を遂行しています。
そんな千葉の唯一の楽しみは、CDショップでCDを試聴することです。 この千葉にとっての「CD」は、リュークにとっての「りんご」と同じ役割を果たしています。 思わず自分が死神であることを忘れるアイテムです。 モノクロな死神の世界が突如カラフルな世界となり、 その時間だけ「死神らしくなくなる」のです。
 
千葉が担当する女性は電機メーカーのクレーム処理係で、地味だし、根暗だし、人生に何の希望もありません。 そんな彼女に千葉は何の関心も持たず、 早々に「死」は「可」であると判断します。ところが「死」が明日に迫った日、 女性がクレーマーのストーカーに追われるのですが、 以外なところでストーカーとCDの接点が生まれます。
 
リュークは最後にライトの名前をデスノートに書きましたが、 最後に千葉が何をしたのかが、この小説の最大の見どころです。

”どうすべきだろうか、と自問する。このまま私が、「可」の報告を出せば、藤木一恵は明日、この世から去ることになる。どういう事故や事件が用意されているのか知らないが、死ぬことには間違いない。

 私は、人間の死に興味はない。仕事だという理由で関わっているに過ぎず、担当している相手の人生がどのような形で終わろうと、あまり気にはならない。

 藤木一恵の顔を思い浮かべてから、「よし」と思い決める。ポケットから財布を取り出して、そこから十円玉を取り出す。迷わずに、それを指で弾いた。落ちてくる硬貨を手の甲で受け止めた。雨で湿った手の上に、硬貨が載っている。”(「死神の精度」からの引用)

死神の精度 (文春文庫)
伊坂 幸太郎
文藝春秋
2012-09-20

死神の浮力
伊坂幸太郎
文藝春秋
2013-10-25