本書の著書・原田 泰さんはベーシック・インカムを「すべての人に最低限の健康で文化的な生活をするための所得を給付するという制度」と定義しています。(「」内は本書からの引用)

<代表的な批判への回答>
これに対する代表的な3つの批判に、原田さんは次のように回答します。

①なぜそうするのか?

・・・(回答)人々の 生活を保障することは現代の先進工業国家がすでにしていることだから。憲法第九条を変えよという人はいるが、憲法第二五条を変えよという人を私は知らない。生活保護の不正受給に国民は批判的だが、生活保護制度そのものに反対しているわけではない。だからベーシック・インカムに反対する人は本来いないはずだ。

②財政赤字がさらにひどいことにならないか?

・・・(回答)すでに行っていることを別の形でするだけだから、赤字がさらに膨らむことはない。むしろもっとも効率的な手段だから、財政支出を減らすことができる。

③貧困は単に所得がないことから生まれるのではなくて、仕事がない、社会から排除されるなどの社会的な問題から生まれるものであり、お金を配れば解決できる問題ではない。

・・・(回答)現行の制度で、貧困を取り巻く根深い問題を解決できているのだろうかと反論したい。大部分の人は、たまたま所得を得る能力が低くても、子どもや女性に乱暴を働いたり、その所得を分別なく使ってしまったりはしない。貧困とは、大部分の人には、所得が少ないという問題なのだから、すべての人々にBIを給付し、現在の福祉制度は、まともでない人々にまともになってもらうように尽力するような制度に改組すべきである。

<生活保護とBI>
「貧困とは何か」をめぐっては今なお多くの議論がありますが、原田さんは本書において「貧困とは所得が少ないことだ」と繰り返し断言しています。それでは現行の生活保護制度とBIはどう違うのでしょうか?

原田さんは「生活保護制度の問題点は、そこにアクセスできない、もらうべき人がもらっていないことだ」と指摘します。BIはこの問題を解決します。原田さんはその理由を「BIという制度にアクセスできれば、人々は生活費を得られ、絶対的な貧困から脱却できる。BI の利点は、すべての人々を貧困から救うことができるということだ」と説明します。

つまり、BIなら、もらうべき人が全員もらえる。だから貧困で苦しむ人はいなくなるのです。本来生活保護を利用できるのに申請さえ出来ない人が大勢います。その理由は「自分が対象になると知らない」「申請に抵抗がある」「申請してもなかなか通らない」などいろいろでしょうが、これらを一気に解決するのがBIという訳です。

<本書を書いた動機>
本書を書いた原田さんの最大の目的は「BIに対する誤解をただし、超高齢化社会に向かう今こそ、BIについて正しく理解していただきたい」ということです。そのため第1章では、「日本における所得分配と貧困の現実を説明し、貧困の問題を解決するために、BIが有用な方法であることを示します。第2章では、所得分配とBIをめぐるさまざまな思想とその対立軸を説明します。第3章では、BIを実現するための財政的裏付けを議論しています。

<本書の結論>
そして本書の結論もまたシンプルです。それは「貧困とは単にお金がないという問題」であり、「ベーシック・インカムによって国家は貧困を解消できる。また、他の方法によって貧困を解消することはできない」というものです。

この結論を簡単に受け入れられない人は多いと思います。「貧困をどう捉えるかという前提が時代遅れ」という批判もありますが、本書ではBIに対して考えられる反論のすべてに詳細なデータをもとに回答しています。それほど分厚い本ではありませんが、誰が読んでもわかるように、懇切丁寧に説明してくれる文章になっています。

もちろん本書を読んでも賛同できない人は大勢いると思いますが、原田さんとしては、ここ数年、BIに関する議論が低調になっているので、本書をきっかけに再び議論を盛り上げたいと願っているのだと思います。